チャンナ・オルナティピンニスというスネークヘッドを半年前から買っている。ネットや雑誌でよくありがちな「プルクラと違ってオルナティピンニスは影に隠れていて慣れにくい。神経質」という情報は、家の個体に関しては全く当てはまらないことがわかった。

現在18センチ、文献によると、最大全長25センチという記載が多いが、実態としては22-23センチ程度で止まる事が多い様子。

飼育当日からガンガン前に出てきて餌を食べ、常に水槽のど真ん中で人間の方をじっと見ているかわいいやつだ。(そのため、横向きの写真を撮影することはできない)

60cm規格水槽で単独飼育しているこいつのために、できるだけ現地の環境を再現してみることにする。日本語の情報が全く不足しているので、海外の情報を取得した。すると、どうやら日本に流通している情報とは違った姿が浮かび上がってきた。

自分へのメモとして記事化するので、気になる人だけみてほしい。(情報の保証はしません)

生息域

アクア雑誌のスネークヘッド特集では、チャンナ・オルナティピンニス(Channa ornatipinnis)は、エーヤワディー川の上流域に生息していると記載がある。イキナリここから落とし穴の様子だ。

学術記載ではミャンマー西部ラカイン州の小渓流(Waloun Chaung)をタイプ産地とする「丘陵地の小河川種」とされています。最近はインド・ミゾラム州の小河川でも記録があります(=分布はタイプ産地周辺の丘陵~山地小流域が中心)。

「エーヤワディー(イラワジ)川上流域で採集」との情報については、文献上は本種の典型的生息地(ラカインの丘陵小渓)と少し地理・環境相が異なりるみたい。

現地環境のコア(本種の“典型”生息地)

地形・流況:急峻な丘陵~山地から降る小規模の岩盤質~礫底の谷筋。森林に覆われ日陰が多く、水は澄明で流速は中~速。雨季には水位・水温・濁度が大きく変動します。落ち葉や倒木が点在します。

水質レンジ(傾向):やや軟水~中硬水、pH 6.8~7.5 前後、導電率は200~400 µS/cm程度の清流域が多い(近隣支流のデータも含む)。季節で温度・濁度が振れます。

水温の季節性:平常は23–26°C程度、乾季の朝晩はもう少し下がり、雨季は気温・流量上昇で変動幅が広がります(“小渓流×森林蔭×雨季の強い季節性”がポイント)。

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水槽での“現地再現”レシピ(実践向け)

  • 水槽サイズ:
    • 成魚ペアで90cm以上がベスト。フタ厳守(飛び出し防止)。単体なら60cm規格でもOK
  • 底床・ハードスケープ
    • 川砂~細礫をベースに、丸い中~大礫(川石)を点在。
    • 流木の根や落ち葉(ブナ系/カシ系)を控えめに。雨季後の堆積感を出すならリーフリターを少量追加(タンニンでpHを軽く下げられる)。
  • 水流・ろ過
    • 外部ろ過+パワーヘッドで中~速めの層流を作る(石の裏にヨレ=隠れ場ができる程度)。酸素飽和を高めに。雨季再現として、週1~2回だけ流量を強めるのも◎。
  • 水質ターゲット
    • pH 6.8–7.4、導電率 200–350 µS/cm、総硬度 2–8 dGH 目安(軟~中程度)。
    • アンモニア/亜硝酸 0、硝酸 20 mg/L未満を維持。週1の中量換水(25–40%)。濁り演出をするなら、換水直後に微粒子(例:麦わら茶色のリーフダスト)を極少量だけ。
  • 水温と季節演出
    • 平常 23–26°C。
    • 「上流相」を狙うなら乾季(冬)に 20–22°Cへ緩やかに下げる→「雨季入り」で1–2°C上げつつ換水頻度↑で流量・濁度の変化をつける(急変は不可)。
  • 照明・植生
    • やや暗め(森林の樹冠を意識)。浮草や流木の陰で減光。
    • 現地は“石+落ち葉+陰”が主で水草は多くありません。使うなら冷涼にも耐えるクリプト/ボルビティスを点景に。
  • 同居・混泳
    • 小魚は捕食対象。単独飼育 or 広めの水槽で近縁スネークヘッドとの混泳が無難
    • 混泳については全般的に難しく、苔取りのエビ類との同居も難しい

体側・鰭の派手な斑紋と小型性は本種の特徴ですが、近縁の小型スネークヘッドも多く、採集地の“谷筋の小渓流相”に適応するレイアウトなら、いずれにせよ外しにくい様子です。

冬の温度下げについて

以前飼育していた歌舞伎は、冬は18度付近まで下げたときが一番調子が良かった。バイオレットスネークヘッドでも同様の話が聞くので、もう少し「チャンナオルナティピンニスの冬の温度管理」について調べてみる。

前提:低温シーズンがある地域の魚

バイオレットスネークヘッド(C. bleheri)やアイズファイヤー(C. sp. “Kabuki”)は、いずれも北東インド〜ミャンマーの丘陵~山地水系に分布し、冬に水温が18 °C前後まで落ちる自然環境に暮らしています。
この低温期は魚にとって「代謝を抑え、内臓を休ませ、繁殖準備に入る季節」として重要で、年間のリズム(“季節のサイクル”)を体内時計に刻む役割を持ちます。

チャンナ・オルナティピンニスも、前述のとおり丘陵地の小渓流~山地支流の出身であり、冬季に水温が20 °Cを下回る期間がある地域です。したがって、「冬を経験させる」こと自体は生態的に不自然ではありません。

試してみる価値がある理由

観点期待できる効果
代謝・内臓リフレッシュ高温期に酷使した肝臓・消化器を休ませ、長期飼育での体調維持につながる。
食欲・繁殖サイクルの安定春の水温上昇とともに摂餌・成長・繁殖行動が活発になる傾向。
色・発色の改善季節変動を経験すると色揚がりが良くなると報告される事例あり。
過密飼育時のトラブル減少低温期は代謝・攻撃性が下がり、ストレスや衝突が抑えられやすい。

実践時の注意点(オルナティピンニス向け)

  1. 段階的に下げる
     → 1週間に1〜2 °Cずつ、22 °C → 20 °C → 18 °Cのようにゆっくり落とす。急変は大きなストレス。
  2. 餌の量を抑える
     → 代謝が落ちるため、週2〜3回・少量を目安に。未消化で腸に負担がかかるのを防ぐ。
  3. ろ過・溶存酸素は維持
     → 低温期でも水質悪化は大敵。酸素飽和度が高い環境を保つと状態が安定。
  4. 個体差に注意
     → 幼魚・痩せ個体・入荷直後などは低温期に弱いこともあるので、コンディションが整ってから実施する。
  5. 「最低18 °C」より下げすぎない
     → 16 °C以下では代謝が極端に落ちて調子を崩す個体が出る例もあります。まずは18〜20 °Cを目安に。

日本の自然環境との違い

「現地環境のコア」の雰囲気は、日本の「標高の高い地域の清流」に近い環境にみえる。そのため、共通点や差異を整理した。

現地「コア環境」と日本の山岳清流の共通点

要素共通点説明
🌲 森林に囲まれた谷筋環境丘陵~低山地を刻む谷筋を流れるため、樹木の枝葉が覆い、直射日光が少ない。水槽でも「やや暗め・陰影のある環境」が合います。
💧 澄んだ水質と高酸素雨季以外は透明度が高く、水は常に動いて酸素飽和度が高い。エアレーションや水流を確保すると状態が安定します。
🪵 落ち葉や流木が沈むリーフリター環境森林起源の有機物が沈んで隠れ場・微生物層・餌生物の供給源になります。日本の沢でもよく見られる特徴です。
🪨 石と礫の多い河床岩盤質〜礫底で、丸い石や岩が点在する景観は非常に共通しています。魚は石陰や流れのヨレに定位します。
🌡️ 季節性のある水温変化現地でも乾季と雨季で水温が動き、冬期に18〜20℃前後まで下がることがあります。日本の沢の「夏は25℃前後・冬は15〜18℃」という変動と近いです。

現地と日本の“違い”ポイント(ここを意識すると精度が上がる)

要素現地日本との違い・留意点
☀️ 年間平均気温年間平均25〜27℃前後日本の山間清流より年間を通してやや温暖。つまり「冬は冷えるが“冷水魚の川”ほど冷たくはならない」。冬でも水温15〜18℃程度にとどまることが多いです。
雨季・乾季のメリハリはっきりしている雨季(5〜10月)は流量と濁度が増し、環境がダイナミックに変化。日本は梅雨と台風期があるとはいえ、年周期の差がより極端です。季節演出に雨季の“濁り”を少し加えると雰囲気が出ます。
🪸 底質のミネラル量やや低め〜中程度火山性の日本の渓流に比べるとミネラル濃度がやや低い傾向(導電率200〜350 µS/cm程度)。底砂や石材の選び方で調整可能です。
🌱 水草の存在感ほとんどない現地は“渓流植物”や沈水植物が少ない落葉+石中心の景観。日本の沢より水草の割合がさらに低いです。

飼育での再現のコツ(=「日本の清流っぽさ」に+α)を整理すると、こんな感じになりそう。

✅ 「山の沢のようなレイアウト」をベースにする
 → 丸石・小礫・流木・落ち葉で構成し、光はやや控えめに。

✅ 「水流と酸素」をしっかり確保する
 → 強すぎず、魚が定位できる程度の中流速が理想。

✅ 「雨季っぽい変化」を演出する
 → 月1回ほど濁り水換え(微細な有機粒子)や流量アップで季節感を出す。

✅ 「冷水魚用クーラーほどの低温は不要」
 → 16℃以下まで落とすと現地より冷たすぎる。18〜20℃で止めるのが安全です。